「オールセラミクスレストレーションにおけるテクニカルポイントについて」 

*愛知県歯科技工士会*小笠原明弘

オールセラミクスはメタルボンドよりも局所的・急激な熱変化には弱い。クラックはコア材まで到達し、又ある時はマイクロクラックとして内包されたまま判らずに完成される。この目に見えないマイクロクラックが焼成する度に成長していく。トラブルを回避するには熱を一箇所に集中しない事である。クーラントホースをWaxUpの段階から使い、精度を高め、クラックを防ぐ。製作過程において精度を高めるにはリングファーネスに入れる前に水で濡らさないことと、プレス後リングをエアコンや扇風機等で約15分位で冷やす。これだけでもかなり精度は良くなる。発熱の少ないポイントを使う。熱成台はクリセラのスタンド。セラミクスのピンが癒着しないし形状も変えられる。

シェーディングは、カメラよりもデジタルビデオを使った方がはるかに再現しやすい。色の問題を言われるが、色調は基本シェードガイドをいっしょに取り込む。フィネス、イボクラー、ビタ、ノリタケ等あれば参考になる。さらに、築成する陶材の混合比をその場で考えてくる。ビデオカメラで一番有利なのは、歯牙の構造が立体的にわかることである。かなり接近して様々な角度でぐるーと撮れば写真で20枚撮るのにビデオだと一瞬である。かなり正確に構造がイメージできる。我々に必要なことは、歯牙の構造である。

現在、多くの咬合理論においては、原理に基づいて計測されたものを、ある一定の連続性のある咬合面に与え、それによる機能を期待し我々歯科技工士が咬合器上で咬合面形態によって「咬ませよう」と努力してきた。しかし、歯牙の周りには非常に多くの筋郡、神経系、が取り巻いている。決して咬合面だけで咬ませられるものでない事がわかる。

又、これらの神経、筋郡は全身的に連動し互いに作用しあっている。体の変化に伴い、顎口腔系も変化し、又反対に口腔の変化は全身に影響するのは言うまでもない。各歯牙及び顎はもともと体の変化に伴い移動できる構造をもっている。たとえば、朝と晩でも体重の変化がある。この変化に伴い筋肉は変化し顎口腔系も影響を受ける。舌も又口腔内にある大きな筋郡である。

この影響を受けずに咬合は語れない。この筋の変化が顎位や歯牙に影響を及ぼす。この時もし顎口腔系が変化に耐えられない形態の時、人間の体は歯牙及び歯牙支持組織を犠牲にすることを始める。これが破折時のムーブメントの一つだと考えられる。つまり、破折を防ぐには、しっかりしたガイダンス、スタビライズを与え、正常な顎位に補正することができる生体が要求する形態が必要なのである。接触ポイントの(数)は「ある時」の咀嚼効率を上げるものである。咬合器上でポイントを数多く作り完璧な形態と思ったCr.を口腔内に装着すると「こっちじゃ咬めません」と言われたり、高すぎる言われじゃりじゃりに削られてしまうのは入れたその瞬間に顎が動いたからである。

つまり、破折するかしないかは、生体が要求する形(全体の)が与えられるかどうかと言うことである。咬合面について言えば、溝を浅くし天然歯の持つ本来の形態から離れていくことは全く逆である。顎位の決定要素、反射機能については、別の機会に発表されるが歯牙の軸面の大きさ(頬舌径)咬頭の高さについても見逃されている。ただ単に、当たると力がかかり破折するのであれば上下顎に体重分ぐらいの力がかかると言われる歯牙は全て破折し又は沈み込んでしまうことになる。

天然歯の持つ咬合面の展開角に一定の規則性があり、連続性があり、隆線に前方斜面、後方斜面があり、その隆線は平面でなく球形に近い曲面であり、又副隆線はある幅を持って開放している。その大きな意味は、体の変化に伴い、又顎の移動に対処できる様に一本一本の歯牙が動きやすいようにできる為の(形)である。
つまり動きの中で生理学的に力の方向,大きさを考えなければ破折についての答えは出ない.天然歯のように隆線が球形に近い連続的な展開角を与えるならば、対合歯との接触時その力は隆線に対し垂直にかかるのではなく接線方向に伝搬される。

昨年発表した「フルマウスリコンストラクションにおける 新しいコンセプトに基づくSIVA式咬合採得について」ここで紹介したバイトリムによる咬合採得法は、医師によりシミュレートされたを、我々歯科技工士がいかに正確に再現し、最終的には生体の要求に応える「バイオサイバネテイックス」を作るシステムの一部である。
このようなシステムで作られたオールセラミックスは、破折率2〜3パーセント(約12年間)という驚異的な数字が出ている。


まとめ
我々歯科技工士は、間違いなく人間の生命の一部を作る仕事に携わっている。マテリアルの選択にもこの事を忘れてはいけない。

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